学ぼう!使おう!コンディショニング vol.49

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第49回目 シリーズ:スポーツ指導者と考えたい”身体づくり”

「ストレッチングの導入方法を考える」

「ストレッチング」についてよく聞かれる質問があります。

・体を柔らかくするにはどうしたらいいですか?

・ウォームアップの時にストレッチを入れた方がいいですか?

・家でストレッチするときは、お風呂上がりがいいですか?

このような疑問、皆さんも思ったことはないですか?

私が改めてこれをテーマにブログを書こうと思った理由があります。

なぜストレッチングはスポーツ現場でよく使われているのか?

「ケガの予防」や「パフォーマンスの向上」のための手段の1つだと言われていますが

実際、スポーツ現場での「ケガは減らない」し

「パフォーマンスとどう繋がるのか」あまり実感のないまま

やっている(やらせている)、という印象です。

皆さんの現場は、いかがでしょうか?

実は「運動前のストレッチング(特にゆっくり伸ばすストレッチング)」には否定的な研究結果が多く発表されています。またストレッチングの効果として「ケガの予防」や「パフォーマンスの向上」においても有意性のあるデータはなく、今なおプラスの効果を実証した研究は少ない。

にもかかわらず、ストレッチングは幅広い対象者に活用されています。

今回はストレッチングの研究論文や書籍を参考にスポーツ現場でよく使われる

「静的(スタティック)ストレッチング」

「動的(ダイナミック)ストレッチング」

基礎研究や書籍の情報を参考・引用しながら

私なりの経験を踏まえて、ストレッチングの導入方法を考察してみたいと思います。

●静的(スタティック)ストレッチングがパフォーマンスに及ぼす影響

『スタティックストレッチングはゆっくりと筋や腱を引き伸ばし、関節可動域の限界あるいは限界近くで一定時間保持する方法*1)』です。

最も馴染みのあるストレッチングの方法ですね。

実は、このストレッチング直後の影響として「筋力が低下する」ことが明らかになっています。

関節を動かす筋が「引き伸ばされ」て「緩む」ことで関節は動かしやすくなる。

しかし、筋は基本「短縮する」ことで力を発揮するので、「引き伸ばされ」た筋は収縮する力発揮が遅くなってしまう・・特に瞬間的に大きな力は発揮しにくくなることが報告されています(例:ウエイトトレーニング、ジャンプ、そしてダッシュなどの動作)。

しかしながら『30秒のスタティックストレッチングのみではストレッチング後まで持続せず、結果としてパフォーマンス低下につながらない*1)』とも報告されています。つまり、30秒以内であれば、パフォーマンスには影響がない、という解釈ができます。

したがって、ウォームアップにこのタイプのストレッチングは適当ではないと考えられます。

●動的(ダイナミック)ストレッチングがパフォーマンスに及ぼす影響

 ダイナミックストレッチングは『関節の曲げ伸ばしや回旋などを行うことで、筋や腱を引き伸ばしたり、実際のスポーツあるいは運動をシュミレートした動作を取り入れることでそれぞれの動きに特異的な柔軟性を向上させたり、利用される筋群間の協調性を高めることができる方法と考えられている*1)』

このことから、運動前の身体の準備の手段としては効果的である、と考えられます。

また、『他のストレッチングに比べて体を十分動かしながら実施することから、筋温並びに深部体温を上昇させる効果があると考えられる*1)』と報告されていることから、スタティックストレッチングよりもウォーミングアップでの導入が適していると考えられます。

●「ケガの防止」として行うストレッチングの効果

残念ながら「ストレッチングを行うことでケガを防止できる」という明かな研究結果も報告されていません。

しかし、日々のスキル練習は、技術練習を繰り返し行うので

ポジション、練習時間や強度、内容、年齢、スキルレベルによっては

同じ関節を何度も動かす動作で、部分的に筋肉が疲労してしまうことがあります。

この状態を放置した期間が長くなると「ケガ」が発生しやすくなる。

これが「スポーツ障害」です。

また「ケガ」に対して、このような文章がありました。

『傷害や疲労の蓄積で柔軟性が欠如している場合には、パフォーマンスを低下させる可能性の低い30秒程度のスタティックストレッチングを利用して柔軟性を改善させた後に、可能な範囲でダイナミックストレッチングを行うと良いかもしれない*1)』

上記のことから「ストレッチングをすればケガが防止できる」ではなく

「競技の動作で負担がかかりやすい部位」をターゲットに「正しく筋を伸ばす(ストレッチングする)意識づけ」こういう取り組み方の導入においてはスタティックストレッチングも効果があるのではないか?

ウォームアップで取り入れるならば、スタティックとダイナミックの組み合わせも一つの手段だと考えることができます。

●現場におけるストレッチング導入の考え方

私がストレッチングを提供する目的は2つです。ブログ冒頭にある「ケガの予防」と「パフォーマンスの向上」です。

「ケガの防止」に科学的な根拠はなくとも、ストレッチングによって傷害発生が増加するという傾向は経験的にないことも確かです。

柔軟性もトレーニングしなければ変わりません。毎日コツコツと継続する必要性を伝え、環境を作っています。

私の「身体づくり」の考え方は「(選手が)イメージ通りの動きをスムーズに遂行できれば、ケガのリスクは低下する」。

そこでストレッチングは「硬い(動きを邪魔している)部分を緩め、関節を動かしやすくする」手段として使っています。

練習後はスタティックストレッチングを導入しています。理由は「使った身体をケアする」ためです。私がサポートする選手は誰一人としてパーフェクトではありませんから、当然、練習をします。翌日のコンディションに影響すれば、上手くなる確率が下がります。このことをよく良く選手へ伝え続けることが一番大事なことです。

ダイナミックストレッチングは「動作トレーニング」として実施しています。個別に必要なものもあれば、競技特性で必要な動きもあります。

試合のウォームアップとして取り入れますが、試合で良いパフォーマンスが引き出せるよう、ストレッチングの動作をうまく実施できるように、予め普段の練習から、ポイントを指導し動作の目的を理解して実施することを目指しています。

●今後の展望

最後に、科学的に立証されていることをもとに、現場で提供するストレッチングについて私なりの考えを述べたいと思います。

①科学的な根拠があることを知っておく

『基本的にはスタティックストレッチングは調整やリラックスを図るためのストレッチングとして、ダイナミックストレッチングは準備のためのストレッチングとして考えるべきである*1)』皆さんが概ね信じている情報で間違いないと思います。最終的には、現場での経験値が大事なのですが、こういう研究論文を改めて確認した上でプログラムすることで、現在の選択に対して自信を持って指導ができます。また「検証されていないこともまだ多くある」ということも知っておけば、事実に縛られ過ぎることもなくなります。

冒頭の「お風呂上がりが良いか」という問いに関しては「そのタイミングが習慣として取り入れやすいなら◯」と回答しています。実際には筋膜の緩みには35〜40℃以上の熱が必要との報告もあるのでお風呂にどの程度浸かるか、にもよりますが、それこそ個人や環境の要因が影響します。

『アイシングを行うと関節の柔軟性(関節可動域)が増加する*3)』この研究も興味深いですね。

②目的を決める

目的とはゴール(到達地点)のことです。「このストレッチングをすればゴールに着く」のではなく「ゴールに到達するために何をすべきか」分析・説明することは大事かな、と思います。

そういう観点から、提供する側がまず目的を明確にしておくことで迷いなく指導ができるでしょう(世の中にはドリルが溢れていますから)。

そのためには①のような根拠が必要になることもあります。例えば、ダイナミックストレッチを確実な動作にするために、「分習法」としてその動作をスタティックで行わせる時間もプロセスの中で必要かもしれません。

スタティックストレッチングの導入は非効率な結果があったとしても正しく理解しておくことで現場では正論になるかもしれないという仮説も試してみてください。

③事実も理解しつつ、最適なプロトコルを試行錯誤する

『この点を十分に理解し、スポーツ現場に関わる人それぞれに場面にあったストレッチングの方法を自ら試行錯誤して考えてもらいたい*1)』

プログラムを振り返り、選手の成長とともに提供者(トレーニング指導者)がブラッシュアップを繰り返していくしか方法はないんだ、と

研究者が最後に記すこの言葉に深く感銘を受けます。

今やドリルはSNSでいくらでも手に入れることができる。だからこそ提供側は、トレーニングの本質を理解し、試行錯誤していく中で自分の引き出しが増えていくのだと思います。

今や万人が知っている「ストレッチング」という言葉ですが改めて書物を読み込むことで、今の現場指導を振り返り、見直す機会となりました。

私としては目的をしっかりと選手に伝え、指導し、パフォーマンスとケガの予防を達成できるよう今後も探していきたいと思います。

参考・引用文献(『』内は引用):

1)運動前のストレッチングがパフォーマンスに及ぼす影響についてー近年のストレッチング研究の結果をもとにー山口太一、石川好二郎、酪農学園大学酪農学部、食品流通学科、食・健康スポーツ科学、北海道大学 大学院教育学研究員応用体力科学

2)ハイパフォーマンスの科学ートップアスリートを目指すトレーニングガイドー2016.David Joyce, Daniel Lewindon,編集,野坂和則,沼澤秀雄監訳,pp61-70

3)Kiyono R, Sato S, Inaba K, Yahata K, Nakamura M. Time course of changes in range of motion, muscle shear elastic modulus, spinal excitability, and muscle temperature during superficial icing. Sport Science for Health [in press]

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この記事を書いた人

現場での活動を通して、スポーツについて思うこと、選手と指導者、チームとの関わり方、目標とする大会へ向けての準備(コンディショニング)について書いています。バレーボーラーの日頃の活動の+αに繋がれば幸いです。

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