鹿屋体育大学で2月2日に行われた、令和7年度競技力向上セミナーのセミナー講師として担当させていただきました。その内容と様子のレポートです。
普段、トレーニングルームで学生たちは各々トレーニングを行っています。
今回はトレーナーが”どんな視点”でアスリートの動作を観察し、指導しているのか?彼らの日々の努力に少し新たな考え方を吹き込んでみたら、どんな風に感じてくれるだろうか?
そんな思いを込めて実技メインのセミナーを行いました。
【内容】
・学生へ向けてのメッセージ
・姿勢の観察/運動の面と軸
・基本動作×解剖学(考える視点)
・まとめ
●学生へ向けてのメッセージ 「今のあなたは『何』を身につけることで、自分の能力を最大限に活かせるのだろうか?」
大学まで競技を続けるのは、本当にそのスポーツが好きなんだと思うのです。だからこそ、思う存分競技に打ち込んでほしい。
「本当に、このトレーニングは(自分の競技の)パフォーマンス向上に繋がっているのだろうか」以前、学生がこのように呟いていた言葉が、今回のセミナーの根幹です。
自分の競技に活かすために整理すべきこと、それは自分自身の「強みと弱み」を把握する。「何を伸ばし、何を補うのか」それを自分で整理しておくだけでも、ドリルの選択の意味が明確になります。
このセミナーが終わった時にもう一度、自問自答をして「自分のためのトレーニング目的を見つけること」をゴールとしました。
●姿勢の観察/運動の面と軸 「トレーニング動作をどう見るか」。人の姿勢や動作を観察する”視点”を持てると、自分にフィードバックできるようになります。その”視点”として運動の面と軸という運動学の基本知識をピックアップしました。
まずセミナー開始前に集まった学生同士でお互いの「姿勢の撮影」を正面(前額面)と側面(矢状面)から撮影してもらいました。
視点1:「姿勢を見るランドマーク」でまず自分の姿勢を観察してみよう

まず己を知る。自分の姿勢を観察するポイントの確認です。特に側面(矢状面)からの観察ではそれぞれ驚きの声が上がっていました。
視点2:「ランドマーク(軸)」と「運動面」で運動中の”体幹部”を観察しよう

例えば「頭ーお尻まで一直線」は正面からの「後頭隆起ー臀烈」のライン、そしてこれが体幹の”軸”と表現されます。では「面」はどこにあるのでしょう?
これは自分が存在する”空間”で動かないものを基準とします。つまり”壁”や”床”です。これらと自分の位置関係を認知する重要な機能が視覚です。
自分が「そこに存在する」という概念から「ある空間の中に存在する」「枠の中の自分」で捉える。例えば壁と壁の距離感も、垂直ー水平の位置も視覚で意識して捉えれば、「枠の中で存在する」ことができます。”動作”という一種の漠然かつ曖昧そうな表現も、実は数学の”座標”のような視点で見ると、誰でも自己評価ができるようになります。
視点3:スクワットやヒンジ動作を「面」で観察する
「枠の中の自分」の「まっすぐ」をそれぞれ観察してみます。ランドマークや面をポイントにチェックしていくと、なんとなくフォームが整うと同時に、身体に負荷がかかる(今までの経験よりもきつい)ことや、関節がうまく動いていない(硬さを感じる)ことにも気づきます。つまり、面という意識を持つことで重力を負荷としてうまく利用することができる。これが自重トレーニングのメリットになります。

●基本動作×解剖学(考える視点) ウエイトルームではどうしても”筋を強くする”ために負荷にとらわれてしまいがちです。しかし動作中に、負荷を適切にコントロールできなければ目的は果たせません。ここで観るポイントは関節の動き。関節と骨は要求された姿勢や伝達される力に対応できるように構築されています。動かす原動力は筋肉ですが、関節の動きが破綻した状態で無理やり動かしてしまうと「ケガ」というマイナスな要因に繋がってしまいます。
視点4:「構えの姿勢(スクワット)」で使う主な関節の運動を確認してみよう」
構えの姿勢ってどの関節を動かす動作でしょうか?膝は?股関節を曲げるとはどういうことなのでしょう。股関節ではなく、腰が丸くなっていませんか?
さっきの「体幹の軸」はどうでしょう。足関節は正しく曲がってますか?正しく曲げるとつま先と膝の方向は揃います。
足関節が”正しく可動する”ためには足部にあるたくさんの骨が適切に支えてくれていることが条件です。扁平足は、その機能が破綻しているため、足関節の動きに歪みが生じ正しく動かすことが難しくなる状態です。そこで「つま先と膝の方向」というキューで動作コントロールを意識化させるのも1つの方法です。
視点5:体幹筋を”解剖学”でイメージを持つ
「体幹筋」とは何か?胴体に取り巻く筋を挙げてイメージを持ってもらいました。大事だということはわかるけれど、パフォーマンスのどの場面で「体幹筋を使っている」と明確な答えは伝えづらいし分かりにくいです。
「背骨(脊柱)を安定させる作用」がポイントだと伝えるようにしています。特に”骨盤”がグラグラすると、地面に立っている自分が不安定になるから・・という表現です。
そこで座った姿勢、立った姿勢で抵抗に耐えてもらう姿を観察してもらいました。なんだか、”体の中心をじんわり使っている感じ”、”体幹を使う(背骨を安定させる)感じ”、とか・・・表現は色々、私は直接感じ取ってもらうようにしています。


今回の参加者のほとんどは水泳部で、水という唯一の抵抗の中で自分の姿勢を安定させるって本当にイメージが難しいと思います。水泳選手が陸上でトレーニングすることを「ドライランドトレーニング」というそうです。陸上では足を地面につけて体幹を安定させることができる場所だからこそ、安定した姿勢でトレーニングを積むことで、パフォーマンスに反映されやすいのではないかと思いました。
●まとめ 日々の体力トレーニングがどのようにパフォーマンスに貢献するのか。今回は私たちトレーナーが”どんな視点”でアスリートの動作を観察し、指導しているのかを、動作の運動面や関節の役割や体育学の基本となる「解剖学」も踏まえ、動きのイメージを体感してもらいながら、伝えてみました。
パフォーマンスには様々な体力要素が関与します。限られた時間、環境の中でフィットネス(体力)を獲得しながら、ケガを予防し、高いレベルの練習に耐えうる身体を獲得するには、工夫が必要になります。
冒頭に投げかけたように「今のあなたは、何を身につけたいのか?」「何を変えれば今の自分を最大限に活かせるのか」。それがアスリートそれぞれの体力トレーニングの目的になると思うし、4年間という限られた競技人生、満足のいく時間の使い方をして欲しいと願いを込めて、これからも学生のサポートを行いたいと思います!
