現場指導レポート#23:ランディング(着地)動作

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 ランディングとは「着地動作」のことです。3月に受講したプライオメトリックスのセミナーの中で、ランディング(着地)動作の重要性について示唆されていたことと、上半期のシーズン中のゲームを観察する中で「ジャンプ着地からの動作の移行」が課題だと捉えていた点がマッチするので、次のシーズンに向けてジャンプの技術的な要素を説明しながら、ジャンプ能力改善というよりむしろ”正しく動く”感覚を共有しています。

<内容>

・パフォーマンスから見えたこと

・着地も技術

・姿勢を整える

●パフォーマンスから見えたこと ジャンプの“高さ”は必要条件ですが、測定の結果を見ても比較的“跳ぶ能力”は獲得できており、これまでのトレーニングプログラムの目的は達成される内容であった考えています。今回「着地」に注目したのは、選手の方からの「ラリー中に素早く下がれないから、次のスパイク準備に遅れてしまう」という言葉からでした。跳ぶ能力には長けていても、着地から次の移動の仕方(身のこなし方)が下手なことに気づきました。そこで、着地動作のより良い獲得は次のプレーの準備が早く整う事に繋がるのではないかと考えました。

 これらの動作は、バレーボールの技術的なことでも指摘を受けることがあります。「下がりが遅い」「移動が遅い」「準備ができていない」。よく現場で飛び交うワードです。実際のプレー動作は状況で多様な場面が想定されるため、この動きの”トレーニング”とプレー動作の関連性は選手それぞれの想像力も必要となりますが、そもそも「下がり方」「移動の仕方」「準備の姿勢」に原因があるはずなので、そこはプレーではなく動き方の訓練として割り切って教えてみる事にしました。

●着地も技術 今月行った測定の中で1年生と2年生以上の数値の差が出たものはいわゆるパワー系種目(ジャンプ力と敏捷性)でした。ジャンプは技術と言いますが、着地にもコツがあり2年生以上はこれまでトレーニングしている経験が反映しているのではと考えています。

 また*垂直跳びの跳躍高は跳び出しの初速度で決定し、初速度は地面に加えた力(地面反力)が影響するので、安定したランディングは、腕の振り込み動作が加わっても体幹がブレない姿勢だと解釈しています。

*参考文献:第 9 回 跳のバイオメカニクス,教科書 金子公宥、福永哲夫編、バイオメカニクス、杏林書院 第 8 章,参考書 宮下充正監修、深代千之編著、跳ぶ科学、大修館書店

 着地の安定性が着地後の動作パフォーマンスに与える影響について、着地に先立って下肢の伸展筋活動が生じており、下肢3つの関節(股関節・膝関節・足関節)すべてが屈曲位となることで衝撃緩衝作用となり、着地後すぐに身体の安定に至るのかもしれない、と述べられています。

*参考文献:ジャンプ着地後の動作の安定性とジャンプならびに着地後の動作転換パフォーマンス能力との関係,今野宏亮,徳元仁美ら,理学療法科学19(4):331-335,2004

 このような情報を踏まえ、ランディングの姿勢から、まずはスクワットジャンプ、CMJからの着地・・・3つの関節の連動性の確認としてコンビネーションカーフレイズ(スクワット姿勢からカーフレイズ動作)、ボックスジャンプ、水平方向へのジャンプと着地(両足、片足着地)で行ったり、着地から横方向へ連続的な動きを入れたりしてみました。選手には着地の先には、必ず次の動きがある事を伝え、着地は次の準備動作として次の動きをイメージすることを説明しながら各自で繰り返し感覚を掴むような時間を設けました。

●姿勢を整える ある参考書に”*意図的運動が効率よく目的を達成するためには、運動開始時に独自な姿勢が必要”と書かれていました。例えば、バスケットボールのシュートを打つ瞬間の姿勢だったり、セッターがトスをあげるためにボールの下で構える瞬間の姿勢、スケーターがボードにのって滑走する姿勢など、決して動作は同じではないけど、重心の載せ方は同じで、パフォーマンスの事前の姿勢次第でその先の結果が決まるのかもしれない(実際に予測ができた)、と考えていたので、この文章はとても腑に落ちたものでした。

*引用文献:基礎運動学第6版,中村隆一,医歯薬出版株式会社,2006,

 スパイクはジャンプした先(空中)でボールを扱うプレーですが、踏み込みでその先のプレー(着地も含め)が決定していると教わり、そう考えてきたので「こういう事なのかな」とようやく理論と繋がった気がしています。

 これら人間がもつ姿勢制御は、自動的に行われるものなので深い学びが必要ですが、より精度の高いトレーニングとそれがパフォーマンスに繋がる方法を試しながら形にしていきたいと思います。

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この記事を書いた人

現場での活動を通して、スポーツについて思うこと、選手と指導者、チームとの関わり方、目標とする大会へ向けての準備(コンディショニング)について書いています。バレーボーラーの日頃の活動の+αに繋がれば幸いです。

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