病気から学んだ ”からだとの向き合い方”

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トレーナーという仕事をしている私は「体を整える=コンディショニング」の重要性を伝えてきました。

けれど2ヶ月前、私自身が「卵巣腫瘍」と診断され、健康であることの意味を深く考えさせられました。

今、振り返って思うことは、どこか無理をして「このくらいなら大丈夫」と過信していたのか、体からのサインを無視してしまったか、体の”小さな違和感”や“ストレス”を、見過ごしていたのかもしれません。

病気をきっかけに、改めて、自分の体と向き合う時間ができました。「体を大切にする」とは、鍛えること以上に “自分を感じ取る力が必要だ” ということを知りました。

また、女性の体は、ホルモンや周期の変化によって常に変化しています。女性においては、この変化を繊細に受け取る努力をしてみることも「コンディショニング」だと思いました。

内容

・卵巣腫瘍とは

・女性特有の体と病気

・自分のからだと向き合うためにできること

・経験を通じて感じたこと

 ●卵巣腫瘍とは 子宮の両側にある卵巣にできる腫瘍で、大きく「良性」「境界性悪性」 「悪性(卵巣がん)」に分類されます。

 多くの場合は無症状で、腹部が腫れたり、下腹部痛や頻尿などの症状は、腫瘍が大きくなると現れることがあります。

 定期的な子宮がん検診や乳がん検診は受けていたけれど、卵巣腫瘍はそれらの検査ではわからないと知りました。腹部エコー検査を受けていれば、もしかしたらもっと早く腫瘍の進行に気づけていたかもしれませんが、私はこの時まで「卵巣腫瘍」というものを知りませんでした。

 腹部のしこりや下腹部痛、頻尿などの症状で異変に気づき、婦人科を受診した時にはすでに14cm(通常は2cm程度)、「境界性悪性腫瘍以上の疑いがある」と伝えられました。即座に大学病院への紹介、MRIやCT検査、胃・大腸カメラ、PET-CTの予約など対応してくださりました。

 検査結果や術中の体内の状況から「境界性悪性腫瘍」という判断で両方の卵巣、卵管、子宮など全摘出となりました。取り出した卵巣等の病理検査の結果をもって、最終的な確定診断となるようです。不幸中の幸と言いますか・・・私は再び「健康」を取り戻しつつあります。

●女性特有の体と病気 卵巣からエストロゲン、プロゲステロンという女性ホルモンが、一般的には約25日〜28日の間で分泌量が変化することを「月経周期」と言います。この分泌量の変化に伴って、月経が起こり、人によっては心や体調の変化が現れることがあります。

 年齢的に更年期に入っており、まもなく「閉経」を迎えるであろう私も、手術を受けるまで定期的な月経がありました。今思えば、病気が発覚する数ヶ月前から、いつもになく”月経痛”がありました。痛みが治るまで座り込まなければなりませんでしたが、短時間で単発的なものだったので、特に気にしませんでした。不正出血や不定期な痛みなどあれば、気に留めていたかもしれませんが・・・全くの無症状です。

 今、振り返るとそういうサインが体から出ていたのかもしれませんが「(月経とは)こういうものだ」「仕方がない」多くの女性はそう思うのではないでしょうか。子宮がん検診も乳がん検診も受けていましたが結果は陰性です。前述したように、特定健診で推奨されるこれらの検査だけでは、早期発見は難しいということを知りましたし、何より予防ができない、女性だけに起こり得る病気なんだということに衝撃を受けました。

●自分のからだと向き合うためにできること 

・月経について正しく理解すること

 月経は女性にとって自身のコンディション(体調)を反映するものですが「当たり前であり、面倒なもの」でもあるため軽視しがちです。

 正常な月経周期は25日〜28日/月ですが、39日/月以上は「希発月経」逆に24日/月以下だと「頻発月経」と呼ばれます。

 3ヶ月以上止まってしまうと「続発性無月経」といい、体に異常が起きていることを示しています。

 初経(初めての月経)が15歳を超えても来ない場合も、婦人科の受診を勧められています。

 残念なことに審美系(新体操やスケート、バレエなど)競技選手や陸上の長距離選手の間では、月経による体重増加が成績や記録に影響することを避ける傾向にあると聞きます。

 また近年「やせ」の若年女性が多いことも問題視されています。10代でのエネルギー不足は今後一生の骨量の獲得に影響します。『この時期に適切な骨量を得られなくなった場合は、疲労骨折を繰り返したり、骨粗鬆症になるリスクが高く』なると言われており、目の前の戦績や容姿に囚われた結果が、その先の将来の自分の健康に影響することを、女性自身がもっと月経について正しく理解する必要があるように感じます。

・月経周期と合わせて体調や気分の変化をメモする

 スマホのアプリ等を活用して、自分の月経周期の記録とともに、その時の体調・気分の変化をメモすることをお勧めします。自分のからだと向き合うために一番大事なことは「日々のからだの変化を感じ取る」こと。

 個人差はありますが月経中に下腹部痛だけでなく腰痛や嘔吐、頭痛や疲れやすさなど月経困難症の症状が現れる場合もあるし、月経前にも精神的にイライラしたり憂鬱になったりと気分や感情のコントロールが難しくなる人もいます。

 これらの状態をまず、自分で把握する行動はコンディショニングの第一歩です。

・婦人科の検診や受診をする

 月経についての情報は今やSNS等で調べることは可能ですが、これらの情報はあくまで一般的なものです。また情報を得たとしても、その先の解決は専門医に相談することが大事だと思います。

 私も異変に気づいた時、まずネットで検索しました。どのサイトにも「痛みや不正出血がある場合には早めに受診しましょう」との記載はありましたが、”不正出血”は当てはまらなかったので1〜2週間程度、受診を悩みました。下腹部痛や頻尿を相談する医療機関は「婦人科」が適当なのかどうかも悩みました。

 もしも私が「卵巣腫瘍」という病気について知っていれば、迷わず婦人科に行ったかもしれません。診断を受けた時に「まさか、自分が・・・」と思ったのは正直な気持ちです。

●経験を通じて、感じたこと 現在もまだ、体の回復のため自宅療養中ですが、日を追うごとに回復しながら様々なことを感じます。生きていると、想像もしないようなことが起こるんだなと思います。

 特に「女性特有の病気は、予防ができない」からこそ「正しく知識を持っておく」ことが早期発見やコンディション管理につながる、ということがわかりました。日頃から自分の体のことを自分で把握していくことの積み重ねによって、自分を理解していくことにつながります。 

 これは、女性に限らず、アスリートに限らず、人が自分らしく生きるための大事な”感覚”じゃないかと思います。どんなに気をつけて生きていても、コンディションは日々変化する。その時々に ”自分のからだと向き合う” のか ”自分の心と向き合う” のか。その”感覚”を養う経験を繰り返すしかないのかもしれないと、今は感じています。

 今後も、私は「コンディショニングの大切さ」を伝えていきます。基本的なことですが、年齢や活動レベルに応じて「運動」「食事」「睡眠」は変化しますから、ちょっとそこに”学び”を加えながら、自分に合った健康のバランスがあることを伝えていきたいと思います。

*参考文献

・ストレングス&コンディショニングにおけるスポーツ女子のためのハンドブック,NSCA ジャパン女性S&C委員会,pp3-9.

・(webサイトより)公益財団法人 日本産科婦人科学会,卵巣の腫瘍とがん.

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この記事を書いた人

現場での活動を通して、スポーツについて思うこと、選手と指導者、チームとの関わり方、目標とする大会へ向けての準備(コンディショニング)について書いています。バレーボーラーの日頃の活動の+αに繋がれば幸いです。

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