「上手くなりたい、強くなりたい」と日々練習やトレーニングに励むアスリート。しかしながらパフォーマンスの資本となる体が健康でなければ、ハードな練習には耐えうることができません。
コンディション管理の目的や、現在のチームで利用しているコンディショニングアプリの活用の実際について記載します。
<内容>
●コンディション管理とは
●データの活用方法
●チームにおけるコンディション管理の取り組み
●コンディション管理とは
コンディションとは「体調や調子」のことですが、選手は日常の生活(学校など)そして練習など、様々なストレスを受け、コンディションは日々変化します。その日々のストレスを、早期に回復できるかはとても重要です。食事(栄養)で失われたエネルギー補給を行い、睡眠(休養)で修復する。このサイクルを繰り返すことで、選手は強くなります。
「コンディションを管理する」とは、自分自身の健康のバロメーターを知り、行動をコントロールしていくことです。感覚や気分で食事をとったり、睡眠するのではなく、自分の体調を記録(データ)に残すことで、自分の行動パターンを知り、より良い方向へ近づけていくことで目標とする大会で活躍する確率を上げる助けとなります。
●データの活用方法
①休養:睡眠時間
「休養が取れたか取れていないか」を評価する指標の1つとして睡眠時間の記録があります。データと合わせて、起きた時の感覚(睡眠の質)も記録しておくと良いでしょう。例えば「1:回復している、2:少し疲れたまま 3:疲れが残っている」と主観的な体調を評価すると、睡眠によって前日のストレスを回復できたか(リカバリー)を可視化しやすくなります。「3:疲れが残っている」状況が続いた時には、自分の行動パターンを振り返り、少し工夫したり、適切な睡眠時間を考えてみたりとコンディション不良を回避する要因も見えてくるかもしれません。
②エネルギー補給:体重
活動で使ったエネルギー(消費エネルギー)が1日の食事で食べたエネルギー(摂取エネルギー)を上回ると体重は減ります。体重の記録は、自分の食事の量や質の参考になります。「いつものように食べているのに体重が減っている」場合は、水分補給が足りていないのかもしれないし、食事のバランスが悪いのかもしれません。
特に女子選手は、月経が近づくと体重が増える傾向があります。またパフォーマンスの良し悪しと体重のデータを照らし合わせ、適切な体重管理は試合に向けてコンディションを整える一つの指標となるかもしれません。
●チームにおけるコンディション管理の取り組み
学生は「ONE TAP SPOTS 」というアプリケーションにデータ入力し、日々のコンディションを把握しています。現時点での管理状況や課題について述べます。
①毎日の入力
「ONE TAP SPORTS」では毎朝の体調(前日からの睡眠時間、睡眠の質、体温、心拍数、体重)の入力と、トレーニング内容(技術練習の時間や体力トレーニングの内容、時間)に対する主観的な運動強度(RPE)を選手は入力しています。また、現在は新入生を中心に、食べたもの(食事)の写真も入力させています。これは大学に入学しほとんどの選手は1人暮らしを始めるので、どのような食事をしているかという意識づけのために報告させています。
②定期的な入力
年に3回行っている体力測定のデータを入力し、フィットネスレベルの変化を年次で、自分の成長を見れるようしていただいています。また、試合のスタッツも合わせて確認できるので、このようなデータがパフォーマンスと関連していることや自分の体力向上の成果をみて、今後のモチベーションになればと思います
③外傷・障害の入力
外傷や障害があった場合、既往歴のデータとして残しています。過去のコンディション状況と合わせて振り返りが可能です。SVリーグでは「ONE TAP SPORTS」を導入しているようなので、卒業後にそのようなチームに行く選手がいればデータを引き継げることも念頭に記録を残しています。
しかしながら、このようなアプリケーションを利用する上でいくつか問題点もあります。一番は選手にデータ入力の定着化です。ユーフォリアの方に相談しながら、できるだけ選手の入力ストレスを回避することや、データの可視化ができる個別のダッシュボードを作ってくださったりと様々なご協力のもと、ようやくここまでの環境が整ったところです。また、選手任せにせず常にこちらもデータを見ながら、気になった数字に対してコミュニケーションを図ること。そこへの労力と定着も肝になると感じています。
選手自身がコンディションを整える大切さを理解し、体感し、継続する事によって自己管理の意識を高めていきたいです。これらのデータをさらに活用できるよう自分もアップデートしながら模索たいと思います