#112 できるようになる喜び

トレーナーをしていて、1番の喜びは

できなかったことが”できるようになる”瞬間を見る時かもしれない。

 

できるようになる瞬間って、無意識で可能になっていることが多く

それはあまりにも急に起こる出来事で

ふとした瞬間に、できている。

 

私たちは成長していく過程の中で

様々なことを教わっている。

例えば、スポーツに関しても

うまくなるために、目標を達成するために

必要だと思われる技術を、教えてもらっている。

 

自分のために教えてもらえているはずなのに

何故だか、怒られたりもする(笑)。

それはさておき・・・

 

私は、プレーのスキルができない原因を

選手の身体の状態や運動の経験値や習熟度、成長などの要因を通して

そのスキルに近づくためのアドバイスをしたり、教えている。

基本、スムーズに動けるようになることを目標とするが

最低限、その選手の要求レベルにおいて、

経験させておかないとまずいと思うことは

徹底して教えている。

 

「いつの間にか、痛くなった」というのも

何故なのか?それはどうやって改善していくべきか?を

今できる努力を、一緒に考える。

 

ただ、その目的は「パフォーマンスを高めるため」であることを

きちんと伝えておかないと

「トレーニング動作ができるようになるため」と

すり替わってしまうことがよくある。

その選手自身の目的が、自分で見えていない時そういうことが起こる。

 

人は、目的が必ずあるから行動する。

そう・・・教えていて、目的がすり替わってしまっていることが

時々ある。

日々日常でも、

自分も気をつけなければならないと言い聞かせている。

 

 

赤ちゃんが、一人で歩き始める瞬間を見たことがありますか?

 

お母さんでも、その瞬間を見逃すことがあるくらい

ふいにその日はおとづれます。

 

赤ちゃんは、歩きたくて歩こうと思っているわけではなく

きっと「何か近付きたい」理由がその先に見えるから

自分で、歩んでいくのだと思う。

欲求が先か、見える(視覚)が先かはわからないけど

そこに近づくための方法なんて全く考えずに

ただそこに近づきたいのだと思う。

だから、その赤ちゃんには近づけた喜びはあったとしても

歩くことができた喜びはない。

 

スポーツの現場にいても同じことだったんだと

最近、わかるようになった。でも、こんなとても大事なことを

気づかずに、今まで生きてきてしまっていたために

自分の視点や思考を変える意識と、努力をしながら、

選手と接するようにしている。

 

やりたいプレー、できるようになりたいプレー、

監督からのアドバイスができるようになれば

きっとうまくなれるんだと信じている選手は多い。

 

そんな事からでも、気づくきっかけをつくってはみるものの、

でも、本当はそうじゃない。

 

選手が、今までを振り返り、回想しながら

自分がそのスポーツに対して向き合っていた感情や思いを

空を仰いで、思い返している時間が本当は必要で

大きなモチベーションになる。

 

モチベーション(自身の行動を動機付けるもの)がなければ

赤ちゃんは、歩かない。

しかも、赤ちゃんは誰から教わることなく、

おそらく「歩けるようになれば、手早く手に入れることができる」

そう、大人を見て真似ているのだと思っている。

 

師匠がよく言う。

「最近の親は、子供が困らないように、すぐ環境を整えてしまう」

子供が困ることに先回りして、大人が先に手を出してしまったり

答えを教えてしまったりする弊害は大きいという。

 

そう・・・。

トレーナーしていても、つい思うことがある。

 

お互い時間と、お金を費やすのであれば

それなりの思いがないと、やはりもったいないと思うし

私もその思いに応えるサービスを提供したい。

 

その思いあってこそ、はじめて

やりたいことが「できた」喜び。

できないことが「できた」瞬間を共有できる。

トレーナーとして

プロセスをサポートしながら、

最後は、その人の本当の目的を達成させて、喜びたい。

 

About the author: MISAKA AYA

バレーボール競技専門の女性フィジカルトレーナーです。 現場での活動を通して、スポーツについて思うこと、選手と指導者、チームとの関わり方、目標とする大会へ向けての準備(コンディショニング)について書いています。バレーボーラーの日頃の活動の+αに繋がれば幸いです。