#110 よく考えられた練習

岡澤セオン選手(東京オリンピックボクシング日本代表)のオンラインイベント(主催:KAGO食スポーツ)を鑑賞した。

『心理を読み解くー今、考える想いとはー』

オリンピック代表選手のメンタリティを

鹿屋体育大学の心理学准教授、中本先生が解説された。

トップアスリートの【生の声(考え方)】は

理論として裏付けがあった。それをリアルタイムに聴けたことが

非常に面白く、メモを取りまくって聞いていた私。

備忘録として残す。

(以下【 】はセオン選手のコメントで、箇条書きの部分はコメントを受けての中林先生の分析。)

 

【 相手に勝ちたいのではなく、自分に勝ちたい 】

・目標の持ち方としては非常に良い。

・「相手に勝つ」という目標を持つよりも

「自分の能力を高めたい」という目標を持つ方がモチベーション(動機付け)は高い。

*モチベーション:人が何かする際の動機付けや目的意識

 

【 試合前は自分に”持っているもの”と”持っていないもの”を仕分けする】

セオン選手は自分に「できること」と「できないこと」を日頃から分けることを心がけているそうで、

試合から遠い時期には苦手な練習(時には戦い方も全く違うスタイルにする)をやり

試合が近づくにつれて、(できないことには目を向けず)できることに集中して練習を重ねる、そうです。だから「不安は、ない」

・練習中は楽しいとは思えないことが多い、むしろ苦しい

→トップアスリートは、苦手なことを練習で克服していこうとする傾向が強い

・試合に向けて、得意なイメージを上げていく

・日頃から自分を俯瞰する(見つめる)能力が高い。愚直(ここでは、その時の気分で流されること、だと思う)ではダメ。

【 コンプレックスが多いから、できないことが気になってしまう 】

【 ダメだ、まだダメだ、と思って努力した 】

・だからこそ、変なプライドがない

・「努力」の方が大事だと思う人

 

【 自分がボクシングするに当たって、とにかくお金がとてもかかる。それを工面してくれる人、協力してくれる人がいてボクシングができる。それを考えたら、頑張るしかない 】

【 ”頑張っている人”に、どうにかならない人はいない 】

周りの選手を見ていても、本当に頑張っている選手は、結果がついてきているのを見てきているからこそ「頑張れば、どうにかなる」と信じている、という。

と言いつつも、次のコメントが興味深い

 

【 ”ただ、努力する” のではダメ。理論的、科学的に意味のある努力をすること 】

・「下手だから、できないから頑張る」ではダメ

・なぜできないのか、”できない理由”を探し、意味のある努力をする。それを自分で考える。

・これは質の高い練習でありこれを「よく考えられた練習理論」という

・なぜ上手くいっているのか、なぜ上手くいっていないのか考える

【 (うまくいくために)何をやったらいいのかわからない時が一番悩むがそれが面白いと思う 】

 

【 自分で自分の機嫌を救いとるように心がけている 】

・”よく考える” 面がここでも現れている。自分がどうやったら気分良くできるかまで、考えられるのは大事

・トップアスリートの傾向として”苦しさの中で楽しみ”を見出せる

【 うまくいかない時に、どういう取り組みをしたら自分の機嫌が良くなるか” 試す” 】

美味しいものを食べにいったり、練習を止めてみたりと色々試してみるそうだ。うまくいかないことも多い、という。

 

質問:(ボクシングは)「好き」と「勝ちたい」はどちらが強い?

【 「好き」の方が強い。好きじゃなくなったらやっていない。本当に好きだったら、勝てる 】

・「好き」=やること自体が動機づけとなっている

・勝ちたいからやるんじゃなく、大好きだから「勝ちたい」と思う

 

【 マイナースポーツであるボクシングの魅力を伝えたい、というのが最終目標だから、金メダルをとれば、それに近づける 】

金メダルを取れば、人が注目するからそれを利用してボクシングの地位を変えるのが最終目標だそうだ。東京オリンピックだけではすぐ忘れられてしまうから、その先のパリ五輪でも金メダルを狙っている。

 

質問:セオン選手のお父さんとお母さんは、どう関わっていたのか?

【 自分がやりたいことは、やらせてくれた。自分で決めた競技だからやろう、と思えた。自分で決めさせてくれたことは、有り難かったと思う 】

・「自分で決めること」がモチベーションとなる

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とにかく”笑顔”で、でもしっかりとした思考があるからこそ、言葉が明確に伝わってくるのが印象的だった。

途中で、実際に試合前に書き込んでいるというノートも出てきた。

相手の分析や試合に向けてのポイントもだが、自分を鼓舞するコメント

”絶対勝つ” ”皆のために勝つ” ”自分の為に勝つ”と大きく、強く書かれた文字から意志の強さが感じられた。

 

最初のコメントから表現されているように

相手も決して弱くはないし、勝てるかどうかはわからないけれど

とにかく自分が考えられる準備を積み重ね、努力できる方向に集中して練習に取り組む

うまくいかないときもある、ことも想定しながら

とにかく「ボクシングが好きでいられる」環境や考え方を

自分で創り出しているところが素晴らしいと思った。

 

「試す」という言葉がよく使われていたことが印象的だった。

自分の課題の克服のために、よく分析をしてそこに向けての努力を惜しまない姿が窺えた。

努力は大事、でも失敗もありきで何度も諦めずに

「試してみる」ことは、自分で行動を決めないとできないことだと思う。

 

スポーツのみならず、見習うべきことが多かった。

 

ー最後に、

このイベントを企画、準備してくださったKAGO食スポーツ代表

長島先生の行動力、発信力に改めて敬意を表します。

ありがとうございました。

 

About the author: MISAKA AYA

バレーボール競技専門の女性フィジカルトレーナーです。 現場での活動を通して、スポーツについて思うこと、選手と指導者、チームとの関わり方、目標とする大会へ向けての準備(コンディショニング)について書いています。バレーボーラーの日頃の活動の+αに繋がれば幸いです。