女性アスリートのコンディショニング

#99 利用可能エネルギー不足

女性に特化した
「コンディショニングを考える必要性」
について不定期に発信します。

とても大切なことで、男女問わず
「健康」について真剣に伝えたいので
少しづつ、書いていきます。

「月経」に関する基本的な知識と
「スポーツ選手と月経」が、
どのように関連するか?挙げてみます。

こういう話は助産師さんが専門なので、
私はごくごく、基本的なことしかわからないのですが

女子選手を相手にする限り避けて通れない

そして、中学生〜高校生くらいの時期から
キチンと自分の身体の事を知ってもらいたい。

「スポーツ」からこういう情報にたまたま引っかかった人、
コンディショニングがここまで関わると思わなかった人
普段、女子選手を扱う男性指導者の方などでも

「へー、そうなんだ・・」
が、幅広く伝わればいいなと思います。

*参照:女性アスリートのための月経対策ハンドブック

 

【生体維持のためのエネルギー量の不足】

以前もブログ(食べなければ動けない)で食事に関して触れましたが

カラダ作りやコンディションを安定させるには

普段の食事の摂り方そして、食べているモノ(何を食べるか?)には

少し気を使わなければならない面が出てきます。

 

 

 

 

*真ん中のRED-Sとは相対的なエネルギー不足のこと。

 

この図は、スポーツにおいてエネルギー不足が健康へ及ぼす影響です。

右上部の「FAT」女性アスリートの三主徴を示しています。

 

でも、実際には運動により失われたエネルギーを

食事でバランスよく、そして必要量補われない状態が続いてしまうと

免疫機能が低下したり、代謝が落ちたり、内分泌系が低下したりと

様々な健康問題が、身体の中で生じてしまうことを

ご理解くださいね。

 

【内分泌系の調節機能の低下】

運動によって消費したエネルギー量よりも

食事によって摂取するエネルギー量が下回ると体重や体脂肪は減少します。

 

急激な体重減少は、女性にとっては喜ばしいことかもしれませんね。

 

ただ、間違いなく健康への被害も生じてきます。

先ほど述べたように、内分泌機能が低下してしまうと

食べたくても食べられなかったり、食べ過ぎてしまったりと

食欲の調節がうまくいかず、エネルギーバランスが崩れる

可能性も考えられるようです。

 

内分泌機能は、それぞれの細胞の働きを調節するホルモンを

身体の状態に合わせて、分泌量をコントロールしています。

例えば、オーバートレーニングや急激な体重の減少などで

カラダへのストレスが高い状態では、黄体ホルモンやエストロゲンなどの

女性ホルモンの分泌量を低下させてしまいます。

 

このように、女性の月経は

身体の状態を示すバロメーターになるということを知っておいてください。

 

逆に言えば、低体温期と高体温期があって

月経周期が定まっているのであれば、

スポーツを安全に、安心に行える女性としての健康が守れていると

思ってください。

 

エネルギー不足は改善すること。

アスリートとしては最優先で行うべきコンディショニングです。

 

【女性アスリート三主徴のスクリーニング】

 

✔️ 月経は規則的にきていますか?

✔️ 何歳で初経がきましたか?

✔️ 直近の月経(最終月経)はいつですか?

✔️ 最近の12カ月間で何回月経がありましたか?

✔️ ホルモン剤を服用していますか?(低容量ピルなど)

✔️ 今、体重が気になりますか?

✔️ 誰かに減量を勧められていますか?

✔️ 特別な減量方法を実施していますか?もしくはいくつかの食べない食品や

食品グループがありますか?

✔️ 接触障害になったことがありますか?

✔️ 疲労骨折を起こしたことがありますか?

✔️ 骨密度が低いといわれたことがありますか?

*女性アスリートの三主徴に関する共同声明では競技スポーツ開始前の評価としてこれらのスクリーニング質問項目を推奨しています。

De souza et al.,BJSM,2014

【利用可能エネルギー不足の改善法】

《アメリカスポーツ医学会の指針》

①最近減少した体重を元に戻す

②正常月経が保てる体重に戻す

③成人はBMI18.5kg/㎡以上、思春期は標準体重の90%以上にする

④エネルギー摂取量や体重は下記を目指す

・エネルギー摂取量は最低2,000kcal/日とする

・エネルギー必要量よりもエネルギー摂取量を20〜30%増やす

・7〜10日ごとに0.5kg以上体重を増加させる

ただし、トレーニングによるエネルギー消費量によってはさらに増やす。

⑤利用可能エネルギーを45kcal/kg、除脂肪量/日以上にする

《国際オリンピック委員会の指針》

①最近のエネルギー摂取量に300〜600kcal/日を加える

②トレーニング量を適正にする

③トレーニングや食事に関するストレスへの対処を考える

 

近年、スマホのアプリで食事の管理や体重などを記録したりするものがあります。

ツールをうまく使いながら、ライフスタイルを正常化しましょう。

【まとめ】

今回は利用可能エネルギー不足について、もう少し踏み込んだ内容でした。

女性アスリートのエネルギー不足は

目に見えない、症状もわからないレベルでじんわりと健康への影響を及ぼします。

免疫機能が低下すると

感染症(風邪・インフルエンザ・新型コロナ)にも罹患しやすくなります。

消化器系の機能が低下すると

さらに食への関心が進まなくなることでしょう。

心臓血管系の機能が低下すると、全身の酸素運搬能力が低下し、

練習しても体力がつかない、もしくは疲れやすくなります。

 

でも、女性は「痩せたい」と「スタイルよくありたい」とどこかで思う。

競技によっては、「痩せれば、勝ちにつながる」と本気で

信じている選手もいるかもしれない。

20代女性のやせている人の割合が日本では高く、社会問題になっています。

 

ここでは、主に女性アスリートへ向けた内容です。

日頃一生懸命取り組んでいる練習が、実を結びますように・・・。

特に、10代の若いアスリートのうちから実践すべきことです。

コンディショニングの考え方が、当たり前にできるように

私のような立場の者が、頑張らねばなりませんね。。

 

 

About the author: MISAKA AYA

バレーボール競技専門の女性フィジカルトレーナーです。 現場での活動を通して、スポーツについて思うこと、選手と指導者、チームとの関わり方、目標とする大会へ向けての準備(コンディショニング)について書いています。バレーボーラーの日頃の活動の+αに繋がれば幸いです。